2018年09月18日 11時00分

Source: Fujitsu Ltd

富士通研究所、中分子創薬へ適用可能な組合せ最適化問題を解く技術を開発
「デジタルアニーラ」の大規模化により適用領域を拡大

東京, 2018年09月18日 - (JCN Newswire) - 株式会社富士通研究所(注1)(以下、富士通研究所)は、富士通株式会社(注2)、富士通アドバンストテクノロジ株式会社(注3)と共同で、組合せ最適化問題を高速に解く計算機アーキテクチャー「デジタルアニーラ」において、大規模な問題への適用を可能とする問題分割技術を開発しました。

従来、「デジタルアニーラ」では、ハードウェアに入力可能な規模までの問題しか扱うことができませんでした。今回、問題の特性に応じて必要部分を抽出し「デジタルアニーラ」で処理した後、全体に戻すフローを複数回行う中で、最適な解を導き出す方法を採用し、大規模な問題への適用を可能としました。

本技術を、8Kビット(8,192ビット)規模の問題を扱うことが可能な第2世代の「デジタルアニーラ」に適用することで、100Kビット規模の問題への適用が可能となります。今回、30Kビット規模の計算が必要とされる中分子創薬の分子の安定構造探索問題が解けることを確認しました。従来のコンピュータで半年かかっていたシミュレーション時間を数日に短縮することが可能であり、中分子医薬の開発を加速することが期待されます。

富士通研究所は、本技術を活用した「デジタルアニーラ」を、様々な分野の組合せ最適化問題に適用することで、新規ビジネス創出に貢献していきます。

開発の背景
実社会のあらゆる分野において、最も効率的・効果的な結果を生み出す組み合わせを求めるものに、組合せ最適化問題があります。組合せ最適化問題では、考えうる要因を問題に追加していくことで、組み合わせ数が爆発的に増加してしまうため、従来のコンピューティングでは実用的な時間で解ける規模に限界があります。そこで富士通研究所は、組合せ最適化問題専用のアーキテクチャー「デジタルアニーラ」を開発し、すでにサービス提供を開始している1Kビット(1,024ビット)の規模への対応を、2018年度中には8Kビットに対応させるべく研究を進めています。しかし、ハードウェアで処理できる規模以上の大規模問題に対応し、さらに複雑な組合せ最適化問題を解くことも求められています。例えば、30Kビット規模の計算になると、中分子創薬の分野では最大でアミノ酸50個規模の安定構造探索問題を短時間に解くことができ、中分子医薬の開発を加速することができます。他にも、工場、製造、交通など、それぞれの分野で適用範囲を拡大することができます。

課題
大規模な問題をハードウェアに入力可能な規模に単純に分割し、分割した問題をそれぞれ最適化したとしても全体の最適化にはなりません。問題の一部分を抽出することで部分的な最適化は可能ですが、適切な箇所を抽出しなければ十分な効果を得ることはできません。

開発した技術
今回、ハードウェアで処理可能な規模よりも大きな問題を取り扱う技術を開発しました。第2世代の「デジタルアニーラ」に本技術を適用することで、100Kビット規模の問題への適用が可能となる見込みです。開発した技術の特長は以下のとおりです。

1. 最適解を求めるための解探索フローを実行
問題全体に対して短時間の全体サーチを行った後に、ハードウェアに入力可能な規模に問題の一部を抽出し、抽出部分について「デジタルアニーラ」により解の探索を行います。その結果を全体に戻すというフローを、抽出箇所を変えながら複数回行うことで、もっとも最適な大規模問題に対する解を導き出します。

2. 問題の特性に応じた複数の分割方式を用意
問題全体の最適化効率を上げるためには、問題の特性に応じてどの部分を抽出するかが重要です。そこで問題の関係性に着目し、問題全体の中で変化のしやすい要素を中心に抽出する方法や要素間の結合が小さい箇所を分割する方法など、複数の分割方式を開発しました。問題に応じて適した分割方式を選択することにより、大規模な問題に対して効率のよい解探索が可能となります。

効果
富士通研究所は、タンパク質由来の創薬シミュレータを開発しているProteinQure Inc.(注4)と共同で、中分子医薬候補の安定構造を求めるシミュレーションに「デジタルアニーラ」が適用可能であることを確認しました。

中分子創薬では、数個~50個程のアミノ酸が鎖状に繋がった中分子医薬候補が、標的となるタンパク質と強固に結合することで、薬としての効果が発揮されます。まず、各アミノ酸をモデル化し格子点上に配置した場合にどの構造が最も安定的かを、アミノ酸同士の結合関係などから「デジタルアニーラ」を用いて探索します。そして、探索されたアミノ酸の構造と標的タンパク質との結合の強さをドッキング計算で調べます。このフローを、1,000回程繰り返すことで、薬効の高い中分子医薬候補を探索します。

今回、本技術を第2世代の「デジタルアニーラ」に適用することで、中分子医薬候補としてアミノ酸48個規模(30Kビット規模)の中分子医薬候補に対し、アミノ酸をモデル化する同じ手法を用いて計算した従来のコンピュータでは数時間かかっていたシミュレーション時間を数分に短縮することができました。これは、このフローを繰り返すことで、半年かかっていた中分子医薬候補の探索が、数日でできるようになることを意味します。「デジタルアニーラ」に開発技術を適用することで、次世代の薬として注目を集める中分子医薬の開発を加速することが期待されます。

今後
富士通研究所は、「デジタルアニーラ」と本技術の適用により、将来的に100万ビット規模の大規模な組合せ最適化問題への対応を目指し、創薬、化学、製造、交通、金融、物流などの幅広い分野のビジネスに貢献していきます。

まずは、中分子創薬に向けて本技術の実用化を加速するために、ProteinQure Inc.との共同研究を開始します。

本リリースの詳細は下記URLをご参照ください。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2018/09/18.html

概要:富士通株式会社

詳細は http://jp.fujitsu.com/ をご覧ください。

Source: Fujitsu Ltd
セクター: エレクトロニクス, IT

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