2019年03月20日 11時00分

Source: ISID

東工大・信州大・ISID、最先端エッジAI技術を活用した牛の行動観察システムを共同開発

酪農・畜産業におけるアニマルウェルフェア向上を目指して実証実験を開始

東京, 2019年03月20日 - (JCN Newswire) - 東京工業大学、信州大学および電通国際情報サービス(以下ISID)の共同プロジェクトチームは、東京工業大学COI(センター・オブ・イノベーション)『サイレントボイス※1 との共感』地球インクルーシブセンシング研究拠点のもと、最先端エッジAI※2 技術を活用した牛の行動観察システムを開発しました。2021 年の社会実装を目指し、信州大学農学部で2019 年4 月から2020 年3 月まで実証実験を実施します。

近年、畜産分野において、アニマルウェルフェア※3に関する消費者意識の高まりが報告されており、世界で、アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼育方式が提案されるようになりました。家畜のアニマルウェルフェアの向上には放牧を含む様々な管理運用が必要で、その対応コストが課題となっています。東工大COI『動物のサイレントボイスとの共感』チーム(リーダー:伊藤浩之 東京工業大学科学技術創成研究院 准教授、サブリーダー:竹田謙一 信州大学 学術研究院農学系 准教授)では、牛のサイレントボイスを聴くことをテーマとしたハードウェア、ソフトウェアの共通プラットホームの整備を進めており、酪農・畜産業におけるアニマルウェルフェアの普及を研究テーマの一つに掲げています。これまでの取り組みで、牛に首輪型センサを取り付けて、複雑な牛の飲水・摂食、腹臥位、立位、歩行などの行動や姿勢の情報を、AI処理により推定できるようになりました。今後は牛が病気にかかり始めているのか、発情、分娩の兆候が見えだしているのか、あるいはストレスを感じているのかといった状態を推定できるよう研究を進めます。

当プロジェクトでは、このAI 処理をソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社のIoT 向けスマートセンシングプロセッサ搭載ボード「SPRESENSE(TM)(スプレッセンス)※4」に実装し、通信機能を備えた首輪型デバイス「感じて考える首輪」のプロトタイプを開発、さらにこのデバイスを用いて牛の行動データを広域で収集し、牧場の温度・湿度などの飼育環境の情報をも併せて収集・分析する行動推定システムを構築しました。(図1、2 参照)

2019 年4 月からは、このシステムを用いて牛の健康状態を把握し、アニマルウェルフェアに配慮しつつ低コストで飼育管理を実現する仕組みの構築に向けた実証実験を信州大学農学部で行います。

■本システムの特徴■

現在普及している牛用エッジデバイスでは、牛の動きの加速度データを測定し、単純に圧縮してBluetoothで送信しているため、検知できる状態の種類が限られていることや、通信距離が短いため放牧で利用しにくいことが課題です。従来の技術を組み合わせて4G ネットワークなどにより牛の動きの加速度データをそのままクラウドに送ってAI 処理すれば、放牧地にいる牛の様々な状態を推定できると思われますが、デバイスの消費電力が大きいため頻繁な電池の交換や充電が必要になってしまいます。

当プロジェクトチームは、ネットワークを介してあらゆるものが繋がるIoT の時代においては、エッジデバイスからゲートウェイデバイス、クラウドまでの各レイヤーにおけるAI 処理のバランスを最適化したシステムアーキテクチャが必要であると考えています。当プロジェクトが開発した行動推定システムは、エッジデバイスとクラウドのAI 処理量と通信量のバランスを最適化することで、これまで課題であったエッジデバイスの長バッテリー寿命とクラウド間の通信のコスト削減に対応できることが特徴です。

本実証実験で用いる「感じて考える首輪」のプロトタイプには、エッジデバイスでAI処理を実行するのに必要な、高性能で低消費電力なプロセッサを搭載したソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社のIoT向けスマートセンシングプロセッサ搭載ボード「SPRESENSE(TM)」を採用し、東京工業大学が開発した牛行動AI 分析アルゴリズムを組み込んでいます。これにより、歩行や摂食といった行動・状態をAI処理で推定してデータ量を圧縮し、低消費電力・低ビットレート・広域カバレッジ(Low Power, Wide Area(LPWA))の無線技術を活用することで、多状態推定・放牧利用・長期間動作を両立できるようにします。

最先端エッジAI技術により推定された牛の状態データに加え、牧場内の様々な環境データをISIDのクラウドサービス「FACERE(R)(ファケレ)※5」に収集します。その上で,総合的なアニマルウェルフェアの状態は、全てのデータを集約したクラウドのAI で推定します。

■本システムの研究開発における各機関の役割■

東京工業大学の役割
東京工業大学は、本システム研究開発のチームリーダーを務めるとともに加速度センサをはじめとするセンサ類の開発、AI処理のデバイスへの実装方式の開発、畜産農家への新システム普及の検討、アニマルウェルフェアの社会的受容性の研究を担当しています。

信州大学の役割
信州大学は、本システム研究開発のサブリーダーを務めるとともに、農学部附属AFC農場における牛の行動データをもとに、エッジAI 学習のための教師データの作成、エッジAI 処理による行動分類の検証、アニマルウェルフェアに適したエッジデバイスの装着方法、飼育環境整備の研究を担当しています。

電通国際情報サービス(ISID)の役割
ISIDは、システム全体の構成検討、クラウドサービスFACERE(R)を活用したデータ収集・解析システムの構築と解析結果を可視化するアプリケーションの開発を担当しています。今回の実証実験で得られる知見を元に、東工大COI におけるエッジAI システムの酪農・畜産業への展開支援、ならびに東工大COI 参画メンバーと協力し、様々な産業用途での利用を提案します。

■『サイレントボイスとの共感』地球インクルーシブセンシング研究拠点について■

東京工業大学では、文部科学省・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「革新的イノベーション創出プログラム」の東工大COI 拠点として研究開発を進めており、2018 年4 月1 日からは『サイレントボイスとの共感』地球インクルーシブセンシング研究拠点(プロジェクトリーダー:廣井聡幸 ソニー株式会社 R&D センターシステム技術開発第1部門長、研究リーダー:若林整 東京工業大学 工学院 教授)として研究開発を推進しています。

地球を取り巻く限られた環境の中で経済発展によるQoL向上を目指す人類にとって、地球上における人間以外との共存共栄は今後ますます必須となります。同拠点では、地球上の人類の枠を超えた様々な声なき声(サイレントボイス)に耳を傾け、共感する(インクルーシブセンシング)ことにより、人・社会・環境の問題に対して、人を通じて低環境負荷/地球に優しい方法で人々が自ら解決するサイクルの実現を目指しています。

※1 サイレントボイス:地球上の自然、里山、社会、人に存在する今まで測ることができなかった・気づかなかった現象を、新規のセンサ技術および既存のセンサ技術を用いて顕在化させた統合的データのこと。東工大COIでは、上記センサ技術により取得されるデータをAI 処理により、解釈可能あるいは私たちに関わりのある情報にすることを「サイレントボイス」に声を与えると表現しています。
※2 エッジAI:通常はクラウド側で実行されるAI の処理をセンサなどのデバイスが存在するエッジ側で実行する仕組み。
※3 アニマルウェルフェア:国際獣疫事務所(OIE)は、アニマルウェルフェアを「動物の生活や死(食用目的のと殺や疾病管理目的の安楽殺)という状況における動物の肉体的および精神的状態」と定義しています。すなわち、人類による動物利用(家畜、実験動物、展示動物、伴侶動物など)を認めつつも、前述の状況に際して、可能な限り苦痛を排除しようとするものです。近年では、オリンピックでの食材調達コード(畜産物)にアニマルウェルフェアが示され、また消費者教育の推進に関する法律(平成24年施行)の下で普及が進められている「倫理的消費」の畜産対応として、アニマルウェルフェアが示されています。昨年12 月には、スターバックスコーヒーがアニマルウェルフェアに配慮されている非ケージシステムで生産された鶏卵を2020 年までに全世界で使用するといった声明を出し、他の世界的な外食産業、ホテルチェーンでも同様の動きがあります。
※4 SPRESENSE(TM) は、ソニー株式会社の商標です。
※5 FACERE(R)は、株式会社電通国際情報サービスの商標です。

【実証実験に関するお問い合わせ先】
株式会社電通国際情報サービス 戸田、松島
Email: [email protected]

【取材申し込み先】
株式会社電通国際情報サービス コーポレートコミュニケーション部 李
Email: [email protected] Tel: 03-6713-6100

Source: ISID
セクター: ITエンタープライズ

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マルチメディア


図1. システムコンセプト:多数頭をリアルタイムで同時モニタリング
 
図2. 実験風景の様子(信州大学農学部附属AFC農場にて)
 
図3.「サイレントボイスとの共感」地球インクルーシブセンシングのコンセプト略図
 

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