2025年08月01日 10時30分

Source: Fujitsu Ltd

富士通、実用的な量子計算の実現に向けて、1万量子ビット超の超伝導量子コンピュータの研究開発を開始
NEDO公募「量子コンピュータの産業化に向けた開発の加速」に採択され、2030年度の構築完了に向けて着手

東京, 2025年8月1日 - (JCN Newswire) - 当社は、実用的な量子計算の実現に向けて、2030年度(注1)に1万物理量子ビット超の超伝導量子コンピュータの構築を目指し、研究開発を開始します。本超伝導量子コンピュータにより、250論理量子ビット(注2)の動作を目指すほか、当社が開発する初期段階のFTQC(early-FTQC)(注3)のアーキテクチャである「STARアーキテクチャ」を使用して、材料物性などの分野において実用的量子計算の実現を目指します。これらに向けて、各技術領域において大規模化技術を開発していきます。

その一環で、当社はこのほど、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募した、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(注4)のテーマ「量子コンピュータの産業化に向けた開発の加速」(以下、本事業)に実施予定先として採択されました。本事業は国立研究開発法人産業技術総合研究所ならびに国立研究開発法人理化学研究所(以下、理研)との共同研究を通じて推進し、事業期間は2027年度までの予定です。

背景

現代社会には、複雑かつ難解な問題が数多く存在しており、従来のコンピュータでは計算不可能な問題を高速に処理する可能性がある量子コンピュータの実用化に期待が寄せられています。しかし、実用レベルの計算問題を解くためには、FTQCで100万物理量子ビットが必要とされています。

当社は、2024年8月に大阪大学との共同研究において、early-FTQCの高効率位相回転ゲート式量子計算アーキテクチャ「STARアーキテクチャ」を開発し、early-FTQCにおいて、6万量子ビット(注5)で現行コンピュータを超える速度で実用アルゴリズムを実行する方法を確立しています。ハードウェアにおいては、2021年に理研と共同で「理研RQC-富士通連携センター」を設立し、2023年10月には64量子ビット、2025年4月には世界最大級(注6)となる256量子ビットの超伝導量子コンピュータを開発し、2026年度には1,000量子ビットの開発を目指しています。さらなる大規模化のためには、高い忠実度を維持した状態での複数量子ビットチップの接続、希釈冷凍機内部の部品や配線の高集積化などの課題があります。また、マイクロ波で量子ビットを制御する超伝導方式に加え、光で量子ビット同士を接続することが可能なダイヤモンドスピン方式の研究開発をオランダ Delft University of Technology(以下、デルフト工科大学)、およびデルフト工科大学にある世界有数の量子技術研究機関であるQuTechとともに進めてきており、これまでに高精度操作可能な量子ビットの形成に成功しています。

採択された本事業について

当社は、2030年度に1万物理量子ビット超の超伝導量子コンピュータを実現すべく、本事業において、以下の大規模化技術の開発を行い、設計指針の確立を目指します。

1. 高スループット・高精度量子ビット製造技術の開発

超伝導量子ビットの核となるジョセフソン接合(注7)は微細な素子であり、その寸法は、量子ビットの固有周波数と相関を持ちます。量子ビットの周波数ばらつきを抑制するために、本素子の製造精度の向上に取り組みます。

2. チップ間インターコネクト技術の開発

複数の量子ビットチップを接続することで量子コンピュータを大規模化する技術を開発します。具体的には、チップを相互に接続する配線・実装技術などに取り組みます。

3. 高密度実装・低コスト量子ビット制御技術の開発

超伝導量子コンピュータでは、量子ビットデバイスを極低温に冷却するための希釈冷凍機が必要です。希釈冷凍機内部の部品点数や発熱量を削減するために、読み出し信号を周波数多重化する技術や極低温で動作する増幅器などを開発します。

4. 量子エラー訂正向けデコーディング技術の開発

FTQCの実現には、大量の量子ビット制御器機から測定結果を集約しエラー箇所を推定するデコーディング技術が必要です。本技術を確立するためのシステム設計に取り組みます。

今後について

当社は、本事業で開発した成果をもとに、様々なパートナー各社との共同研究を通して大規模超伝導量子コンピュータの構築に取り組み、2030年度を目途に1万物理量子ビット超の大規模超伝導量子コンピュータの構築を目指します。また、2030年度以降には超伝導・ダイヤモンドスピンの接続、2035年度には複数量子ビットチップのリモート接続も視野に、1,000論理量子ビットの実現を目指します。当社は今後も、量子コンピュータの実用化および産業化に向けた試みをあらゆるレイヤーで進めていきます。

富士通株式会社 執行役員副社長 CTO、システムプラットフォーム担当 ヴィヴェック マハジャンのコメント

当社はこれまで、世界最先端の共同研究先とともに、ソフトウェアからハードウェアまでの幅広い領域でフロントランナーとして量子コンピュータの研究開発に取り組んできました。今回採択された本事業を最大限活用し、Made in Japanの大規模量子コンピュータの構築を目指します。2030年度には250論理量子ビット、2035年度には1,000論理量子ビット機の実現により実用的量子計算を推進し、量子コンピューティング市場の早期立ち上げをリードしていきます。さらには、当社が開発するダイヤモンドスピン方式との接続にも取り組むとともに、「富岳NEXT」(注8)向けに適用するArmベース次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」シリーズを搭載したシステムとも連携する最先端の量子HPCハイブリッドプラットフォームを提供することを目指します。

URL https://global.fujitsu/ja-jp/pr/news/2025/08/01-01 

Source: Fujitsu Ltd
セクター: IT

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