2025年12月17日 15時30分

Source: Fujitsu Ltd

キリンと富士通、創薬DX技術を活用し、AIと実試験でシチコリンの腸脳作用メカニズムを解明

東京, 2025年12月17日 - (JCN Newswire) - キリンホールディングス株式会社(代表取締役社長 COO 南方健志、以下キリン)のヘルスサイエンス研究所(所長 村島弘一郎)と富士通株式会社(代表取締役社長 時田隆仁、以下富士通)は、食品の新たな機能創出を目指し、AIを活用した創薬DX技術(注1)の一つであるQSP(定量的システム薬理学)(注2)モデルを用いた食品機能性シミュレーションに関する共同研究を実施しました。その結果、シチコリン(注3)に関して、世界で初めて腸脳相関(注4)に関する新規作用メカニズムを示唆する知見を得ました。本知見は、富士通とそのパートナー企業である仏Nova In Silico SAS(Gregoire Boutonnet and Frederic Cogny, Co-CEOs、以下ノバインシリコ社) の先進QSP技術に基づくバーチャル被験者シミュレーションと細胞モデル実試験を組み合わせて得られた成果です。

従来の創薬は時間やコストがかかり、ヒトでの有効性の証明確度の向上にも限界がありました。さらに近年、医療ニーズの多様化、動物実験の制約強化などにより、創薬分野では効率的な研究開発が求められています。こうした課題解決のため、AIやデータサイエンスを活用したDX技術の導入が進んでいます。特に、DX技術によるバーチャル被験者生成やin silicoシミュレーション(注5)は、動物実験を実施せずにヒトでの有効性証明確度を向上させることが見込める技術であるため、食品機能性研究にも応用が期待されています。

本研究は、脳機能サポートに重要なシチコリンの新たな生理機能について、AI予測と実試験を併用して評価した取り組みであり、食品機能性研究にDX技術を本格的に活用した世界的にも先駆的な事例です。これらの知見は、ヘルスサイエンス研究におけるAIを用いたDX技術活用を促進すると共に、シチコリンによる健康長寿社会の実現という価値実装に大きく貢献するものと考えられます。

研究成果(概要)

シチコリンの代謝動態及び作用に関わる受容体等の情報をキリン取得のデータや文献調査をもとに収集し、DX技術を活用してシチコリンの機能性を評価するためのQSPモデルを構築しました。構築したモデルを用いたシミュレーションにより、シチコリンの経口摂取が腸-神経コリン作動性シグナルを高めること(図1)、腸におけるシナプス(神経細胞同士が情報をやり取りする接合部)内のアセチルコリン(神経伝達物質)量が用量依存的に増加すること(図2)が予測されました。併せて、腸管上皮細胞と神経細胞の共培養系においてシチコリンの腸を介した神経活性化を実試験においても確認しました(図3)。

図1:QSPモデルを用いた腸に存在する神経におけるコリン作動性リガンド結合受容体のシミュレーション評価

図2:QSPモデルを用いた腸に存在するシナプス内アセチルコリン量のシミュレーション評価

図3:腸管上皮細胞と神経細胞の共培養系を用いた微小電極アレイによる神経活性化評価

得られた示唆

本研究では、AI活用によりシチコリンが腸を介して神経を活性化する可能性を予測し、細胞系での実試験で裏付けました。また、腸の神経は脳と深く結びつくことが知られています。本研究でシチコリンの腸脳作用メカニズムの一端が明らかになりました。

今後の展望

本研究は食品機能性研究にDX技術を本格的に活用した世界的にも先駆的な事例です。脳機能サポートに重要なシチコリンの新たな生理機能解明に資する知見であり、シチコリンの健康機能性素材(注6)としての価値向上に寄与します。

キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します。富士通は、今回の適用技術であるQSPモデルに加え、量子コンピューティングやAI等の先端技術を活用して、創薬や機能性食品の開発を支援し、人々のウェルビーイング向上に貢献していきます。

URL https://global.fujitsu/ja-jp/pr/news/2025/12/17-01 

Source: Fujitsu Ltd
セクター: Enterprise IT

Copyright ©2025 JCN Newswire. All rights reserved. A division of Japan Corporate News Network.

関連プレスリリース


富士通、偽・誤情報や新たなAIリスクに対応する国際コンソーシアム「Frontria」を創立
2025年12月02日 10時50分
 
富士通、AIの活用により、10万原子超からなる全固体電池界面構造の高精度・長時間分子動力学シミュレーションを実現
2025年12月01日 11時10分
 
富士通、企業をまたがるサプライチェーンを最適に運用するマルチAIエージェント連携技術を開発し、実証実験を開始
2025年12月01日 10時10分
 
富士通、保険業界の基幹業務を支える次世代プラットフォーム「Fujitsu Cloud for Insurance Japan Edition」を提供開始
2025年11月28日 10時45分
 
富士通、日本精工様の軸受製品のプロダクトライフサイクルにおける環境価値創出を支援するプラットフォームを構築
2025年11月28日 10時30分
 
富士通と山口大学、小型衛星上で冗長構成GPUによる準リアルタイム画像処理を実現する低電力エッジコンピューティング技術を開発
2025年11月27日 11時40分
 
富士通、藻場のブルーカーボンを効率よく定量化する海洋デジタルツイン技術を開発し、Jブルークレジット認証を獲得
2025年11月26日 10時20分
 
富士通、食品流通業界向け基幹システムの機能を網羅するソリューション「Fujitsu 食品流通 Sync Service」を体系化し、1,500以上の機能を順次提供開始
2025年11月20日 10時20分
 
富士通 Japan、生成 AI を活用した医療文章作成支援サービスを名古屋医療センター様に導入し、退院サマリを対象に本格運用開始
2025年11月19日 11時10分
 
富士通、Business Creation LabでAWSジャパンと流通・サービス業界の未来を変革、生成AIで加速
2025年11月17日 12時00分
 
もっと見る >>

新着プレスリリース


もっと見る >>